エルゴチオネインの効果・副作用・安全性を科学的に解説

健康や美容に役立つのではないかと話題を集めているのが、エルゴチオネインと呼ばれる抗酸化物質です。これは人間が自然な形で生成できない物質ですが、キノコ類など一部の食材や、粉末状・サプリメント状に加工された製品から摂取できます。今回は、この成分を取り入れると人体にどのような影響が及ぶのか述べ、副作用や安全性について科学的に解説しましょう。

エルゴチオネインの由来と生成

エルゴチオネイン(Ergothioneine、EGT)とは、硫黄原子を含む誘導体です。これは人間を含む多くの動物にとって不可欠な物質ですが、体内で合成することはできません。そのため、食事を通じて摂取する必要があり、その立ち位置は「必須アミノ酸」と似ています。まずはエルゴチオネインがどのような食べ物に含まれるのか、その作用と併せて見てみましょう。

エルゴチオネインが含まれる食べ物とサプリ

自然界にある食材の中では、主に一部のキノコ類に含まれています。加熱しても分解されにくく、水溶性という特性を備えるため、鍋物やスープなどに加工しても、効率よく摂取できるでしょう。

ただし、ひとことでキノコといっても、選択するキノコのバリエーションに応じてその含有量は大きく異なります。キノコの種類ごとに見た含有量は、山形大学農学部が『今月の農業 2009年1月号』にまとめているため、ここでは参考値として山形大学農学部によるデータを引用します。

【含有量の比較表(山形大学農学部による)】
キノコの種類 エルゴチオネイン含有量
たもぎ茸 125.6mg
ヒラタケ 27.4mg
エリンギ 12.7mg
ハナビラタケ 11.2mg
エノキタケ 9.8mg
シイタケ 9.6mg
ヤマブシタケ 9.1mg
ヤマエノキタケ 6.8mg
マッシュルーム 3.8mg
白マイタケ 2.9mg
※100gあたり

配合量が飛び抜けて多いのは「たもぎ茸(タモギタケ)」です。たもぎ茸は北海道や東北地方に自生するヒラタケ科ヒラタケ属の食用キノコであり、その希少性の高さから「幻のキノコ」とも呼ばれています。そのため、東北以南の地域にお住まいの方にとっては、あまりなじみのないキノコでしょう。

近年では、エルゴチオネインに関する研究が進んでおり、特有の成分が健康や美容に大きなメリットをもたらす可能性が指摘されはじめました。それに伴い、これを主成分とするサプリメントも流通しています。たもぎ茸もサプリメントの原料として用いられており、日本全国から気軽に入手することが可能です。

エルゴチオネインの主な作用

希少なきのこ類から成分を取り入れることにより、私たちの健康にもたらされると考えられている作用は多岐にわたります。期待される効果について、健康に影響するポイントを合わせて見てみましょう。

【エルゴチオネインの健康への影響】
期待される効果 健康への影響
美肌効果 活性酸素を押さえてシミ、シワ、たるみなどを予防し、改善する
生活習慣病の予防 抗酸化作用により動脈硬化、糖尿病、高血圧のリスクを抑える
脳機能の保護 脳内の神経ストレスを軽減し、記憶力や集中力、認知機能を維持する
免疫力の向上 免疫細胞の機能低下を抑え、感染症などへの対抗力が向上する
抗炎症作用 酸化ストレスが引き起こす炎症を予防し、改善する
疲労回復 細胞のミトコンドリアを保護し、疲労を軽減する

エルゴチオネインの特徴は、強力で多くの影響を与える可能性を秘めた抗酸化作用を持つことです。動脈硬化をはじめとする生活習慣病や、シミ・シワ・たるみに代表される肌のエイジングサインや、そしてがんなどの深刻な疾患につながる慢性炎症は、活性酸素との関連性が深いと見られています。

このような問題を食い止める可能性を秘めているのが、活性酸素に対抗する働きを見せる抗酸化作用です。この活躍によって、私たちの健康を阻害するさまざまな問題を解消へと導く、救世主となりえるのです。

エルゴチオネインの健康効果を科学的に解説

ここまでの概要でお伝えしたとおり、エルゴチオネインの持つ素晴らしい可能性の片鱗を挙げると、枚挙にいとまがありません。ここからは、より詳細なエビデンスを示すために、科学的な観点からメカニズムを解説します。

抗酸化作用とそのメカニズム

エルゴチオネインの効果について語る上で知っておくと良いのは、抗酸化作用と活性酸素の関係性です。簡単にまとめると、この2つには次のような関連があります。

<活性酸素と抗酸化作用の特徴>
・活性酸素…細胞のDNAやたんぱく質、脂質などを損傷させ、老化や疾患の原因となる
・抗酸化作用…体内で発生する活性酸素が引き起こす酸化を抑える働きをする

体内には、活性酸素を分解する「スーパーオキシドジスムターゼ」という抗酸化酵素が備わっています。しかし、これは加齢に伴って減少し、年齢を重ねるにつれて活性酸素が蓄積されやすくなります。そこで、失われたスーパーオキシドジスムターゼの代役として体内をサポートする役割を担うのが、エルゴチオネインです。

スーパーオキシドジスムターゼなどに代表される抗酸化物質は、活性酸素やフリーラジカルに対して電子を与え、中和して消去します。また、脂質過酸化の連鎖を食い止めたり、酸化された分子を還元して機能を回復させたりして、活性酸素の働きを食い止めます。これが、抗酸化物質が機能するメカニズムです。

肌の健康への影響と美肌効果

人間の肌は、紫外線や大気汚染といった、酸化ダメージをもたらすさまざまな問題にさらされています。さらに日常生活で感じるストレスも酸化ダメージとなり、これがシミ、シワ、たるみといった肌トラブルの原因となるのです。酸化ダメージの原因となる活性酸素を打ち消すと考えられる抗酸化作用は、美肌効果を得るうえで大いに役立つでしょう。

例えば紫外線は、皮膚に活性酸素を発生させる原因となり、DNA損傷やコラーゲンの分解、メラニン生成の促進といった問題を誘発します。過去には動物実験が行われた歴史もありますが、ここでは紫外線による肌へのダメージを軽減する効果が認められました。そのため、紫外線が原因で発生する肌トラブルも予防・改善できると考えられます。

また、肌にハリと弾力を与えるコラーゲンやエラスチンはたんぱく質により組み立てられていますが、厄介なことに活性酸素はたんぱく質を変質させて分解を加速させる性質を持ちます。ここで出番となるのがエルゴチオネインです。成分の導入により、活性酸素による攻撃からたんぱく質を保護できるため、ハリや弾力が失われたことにより問題化するシワやたるみなどのトラブルを防げる可能性があるでしょう。

さらに、エルゴチオネインは、チロシナーゼと呼ばれる酵素の働きを阻害するとされています。チロシナーゼは、シミの原因となるメラニンを生成する酵素です。悪い連鎖を食い止めることにより、メラニンの過剰な生成を抑制し、シミの予防や改善に導く可能性もあります。

髪の健康とエルゴチオネインの関係

髪の毛はアミノ酸が結び付くことにより構成されており、これが不足すると、髪の毛が細くなったり、抜け落ちたりするリスクが上昇します。そこで救世主となるのが、エルゴチオネインの機能性分子(リプレ)です。これは、髪の毛の主要な構成要素であるアミノ酸に酷似しているため、浸透すると新たな結合を誘発し、新しい髪が生まれ、さらに髪を太くする可能性があります。

また、AGA(男性型脱毛症)の原因とされるジヒドロテストステロン(DHT)は、5αリダクターゼと呼ばれる酵素が生み出す可能性が考えられます。先ほどの作用に加えて、5αリダクターゼを阻害する作用もあるとされており、脱毛予防や脱毛の進行を抑制する効果が期待できる点に関しても大きなメリットです。

髪の健康との関係はこれだけにとどまりません。さらに、毛母細胞を活性化させられる可能性もあります。これにより、細胞分裂を繰り返すたびに髪の毛が太さと長さを取り戻し、ハリとコシのある若々しい髪の毛を復活させられるかもしれません。

エルゴチオネインの副作用と安全性について

ここまでにその魅力とメリットを存分にお伝えしてきたエルゴチオネインは、キノコ類などの自然界に存在する、私たちにとって身近な食べ物にも含有される化合物です。これを多量に含む「たもぎ茸(タモギダケ)」も、昔から食用として用いられてきた歴史がありますが、今日に至るまで重篤なトラブルは認められていません。

しかし、サプリメントなどから特有の成分を摂取する前に、念には念を入れて副作用や安全性について深く知っておきたいという方も多いでしょう。ここでは、副作用の可能性や、安全な摂取量などについて解説します。

副作用の可能性とその症状

エルゴチオネインは、自然界にあるごく一部の菌類に含まれています。私たちの食卓でもおなじみの「ヒラタケ」や「舞茸」などにも含まれるため、無意識のうちに摂取している方が多いでしょう。このような食材が世界中で消費されていることからもわかるように、これまでに重篤な副作用をはじめとするトラブルが発生したという報告は見つかりません。過去にはヒト臨床試験も行われていますが、副作用に関する報告はありませんでした。

ただし、エルゴチオネインと同時に摂取する物質の影響を受けて、副作用が発生する可能性はあります。例えば、たもぎ茸などのキノコ類や、キノコ類を原料とするサプリメント・パウダーを摂取する場合です。このケースでは、キノコに関するアレルギーを持っている方が摂取した場合、発疹やかゆみなどのアレルギー反応が表れる可能性があります。

なお、エルゴチオネインは硫黄を含む化合物ですが、硫黄アレルギーに関する報告例はありません。しかし、アレルギーを抱えている方や、何らかの持病により常備薬を服用している方は、念のため主治医に相談することを推奨します。

エルゴチオネインの安全な摂取量と注意点

欧州食品安全機関(EFSA)は、妊娠中や授乳中の女性、乳幼児、小児に対して、サプリメント状に加工してエルゴチオネインを摂取させることを承認しました。これによると、成人は1日あたり1.31mg/kg体重まで摂取したとしても、健康上の問題は起こらないと評価され、安全性に関する疑問は呈されていません。

そのため、成分を多量に含む「たもぎ茸(タモギダケ)」を摂取したり、これを主成分とするサプリメントやパウダーを摂取したりしても、極端な過剰摂取をしない限り、問題になることはありません。

ただし、生のキノコ類は傷みが早く、生のままで食べると腹痛などの症状を引き起こす可能性があるため、新鮮なうちに加熱して食しましょう。サプリメントやパウダーに関しても、メーカーの推奨摂取量を守り、過剰摂取は避けてください。

エルゴチオネインの摂取方法

これまでの解説により、その特別な魅力を知った方の中には、どうすれば効率よく成分を摂取できるのか知りたいと考える方も多いでしょう。代表的な摂取方法は大きく分けて2つです。それぞれの方法について、摂り方のコツやポイントも併せて解説します。

きのことサプリメント

代表的な摂取方法として挙げられるのは、食品から摂取する方法と、サプリメントを摂取する方法の2つです。たもぎ茸やヒラタケ、エリンギには特に含有量が多いため、摂取をおすすめできます。食生活やライフスタイルに合わせて、より気軽に摂取できる方法を選ぶと良いでしょう。

効果的なエルゴチオネイン摂取法

ここまでにご紹介した素晴らしい効果を、ご自身の体で深く実感するためのコツは、継続的に摂取を続けることです。体内の濃度を常に最適なレベルに保つことにより、日々生成される厄介な存在である活性酸素に対抗しやすくなります。一度に大量摂取するのではなく、少量を毎日摂取することを心がけましょう。

きのこ類から効率的に摂取する方法

魅力をふんだんに持つエルゴチオネインですが、水溶性という性質を持つため、水分と一緒に調理すると栄養素が溶け出しかねません。貴重な成分を流出させないためには、汁物や鍋物、炊き込みご飯といった、溶け出した水分と一緒に摂取する調理法を選ぶと効率的です。より気軽に摂取したいならば、習慣化しやすいサプリメントやパウダータイプの製品を選ぶと良いでしょう。

まとめ

エルゴチオネインは、一部のキノコや細菌だけが合成できるユニークな抗酸化物質です。老化現象の原因となる活性酸素に対抗できるため、老化防止や生活習慣病予防、髪の毛を含む美容・美肌といった効果が期待できます。また、懸念すべきアレルギーなどのリスクもありません。

摂取方法は主に「キノコとサプリメント」の2種類です。継続的な摂取によってその魅力を最大限に引き出せるため、ご自身の食生活やライフスタイルに合った摂取方法を選びましょう。

このページのTOPへ

たもぎ茸を使った化粧品