たもぎ茸は認知症予防に影響がある!?たもぎ茸の効能などを紹介します
日本は世界的に見ても平均寿命が長い国です。長生きしやすい環境があることは喜ばしい一方、年齢を重ねるにつれて発症率が高まる疾患には警戒しなければなりません。認知症はとりわけ警戒すべき疾患のひとつですが、予防効果があるとされ注目を浴びているのが「たもぎ茸」です。この記事では、たもぎ茸が認知症予防に与える影響などについて解説します。
たもぎ茸とは?その基本情報と特性
たもぎ茸は、まだ一般には広く知られていない、極めて希少性の高いきのこ類です。まずは特徴や栄養素、産地など、たもぎ茸の基本情報をご紹介します。
たもぎ茸の定義と特徴
たもぎ茸は、ヒラタケ科ヒラタケ属のきのこです。希少性の高さから「幻のきのこ」の異名をとり、うまみ成分を含むため「出汁きのこ」とも呼ばれています。たもぎ茸は、鮮やかな黄色を帯びた見た目が特徴的で、日本では昔から汁物や炒め物などの食材として使われてきました。
栄養素の含有量
たもぎ茸の栄養素の含有量は次のとおりです。
【栄養素の含有量】
| 水分 | 91.7g |
| たんぱく質 | 3.6g |
| 脂質 | 0.3g |
| 炭水化物 | 3.7g |
| 飽和脂肪酸 | 0.02g |
| n-6系脂肪酸 | 0.08g |
| 糖質 | 0.4g |
| 食物繊維 | 3.3g |
| ビタミンD | 0.8μg |
| ビタミンB1 | 0.17mg |
| ビタミンB2 | 0.33mg |
| ナイアシン | 12mg |
| ビタミンB6 | 0.12mg |
| 葉酸 | 80μg |
| パントテン酸 | 1.32mg |
| ビオチン | 23μg |
| ナトリウム | 1mg |
| カリウム | 190mg |
| カルシウム | 2mg |
| マグネシウム | 11mg |
| リン | 85mg |
| 鉄 | 0.8mg |
| 亜鉛 | 0.6mg |
| 銅 | 0.32mg |
| マンガン | 0.06mg |
| ヨウ素 | 1μg |
| セレン | 4μg |
| 灰分 | 0.7g |
※100gあたり
出典:文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年/食品番号08019 たもぎたけ/生(https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=8_08019_7 )
上記の数値は、すべて非加熱の場合です。上記には含まれていませんが、人間の体内では生成できない「エルゴチオネイン」という成分も含まれています。これはその他のきのこ類(ヒラタケ、舞茸など)にも含まれる成分ですが、たもぎ茸の特徴は何と言っても含有量の多さであり、ヒラタケの約4倍に達するほどです。この件の詳細は後述します。
たもぎ茸の産地と品質
たもぎ茸は、日本国内では主に北海道や東北地方に自生しています。海外では中国の北部やロシアに自生しており、比較的気温が低いエリアにあることが特徴です。品質の高いたもぎ茸を人工栽培することは難しく、本州以南ではあまり知名度が高くありません。
たもぎ茸が認知症予防に与える影響

たもぎ茸は認知症予防に効果があるとされています。たもぎ茸と認知症の関係性を知るためには、まず認知症の原因とメカニズムを知ることが大切です。ここでは、たもぎ茸が認知症予防に与える影響について解説します。
認知症の原因とそのメカニズム
そもそも認知症とは、さまざまな原因により脳の神経細胞が損傷し、思考や判断といった認知機能が低下する症状です。認知症には以下のような種類があり、それぞれ原因が異なります。
<代表的な疾患の種類>
・アルツハイマー型認知症
・血管性認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭型認知症
報告によっては認知症のうちアルツハイマー型が67.6%を占めるとされ、最多タイプとされています(2013年発表の研究値を参照)。
これは、脳内に蓄積された異常なたんぱく質が神経細胞を破壊し、脳を委縮させることにより発症します。レビー小体型認知症のメカニズムもアルツハイマー型認知症に近く、レビー小体と呼ばれるたんぱく質が神経細胞を破壊して認知症を発症させています。
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血が原因で、一部の神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、脳内血管障害がおこることにより発症する認知症です。前頭側頭型認知症は、神経細胞が減少し脳が委縮する「前頭側頭葉変性症」が認知症を発症させる原因となります。
たもぎ茸の抗酸化作用とは?
人間の体内で過剰に生成され、さまざまな悪影響を及ぼす「活性酸素」を打ち消す防御機能のことを、抗酸化作用と呼びます。活性酸素は紫外線やストレス、飲酒・喫煙などの生活習慣によって生み出され、さまざまな組織や器官の老化を引き起こします。これを打ち消す救世主として期待できるものこそが抗酸化作用です。
たもぎ茸が注目される理由は、抗酸化物質である「エルゴチオネイン」をたっぷりと含むためです。この成分は、主に一部のきのこなどの菌類や細菌だけが合成できます。このことから、たもぎ茸を摂取することにより、体内の老化を抑制する効果が期待できます。
神経細胞の保護と記憶力改善の可能性
エルゴチオネインには、神経細胞を保護する効果があるとされています。ヒト神経細胞を対象にした実験も行われており、試験管内のヒト神経細胞実験で、エルゴチオネインが活性酸素由来の神経細胞死を抑制したという報告があります。
これらは、アルツハイマー型認知症の病態進行を抑える基礎研究の報告で、今後の臨床応用が期待される段階です。
また、この特殊かつ貴重な役割を担うエルゴチオネインは体内で分解されにくく、特異的トランスポーターOCTN1を通じて脳内に取り込まれ、海馬を含む神経組織に蓄積することが報告されています。
たもぎ茸から抽出したエルゴチオネインのサプリメントを使って行われた実験では、2ヶ月目以降に言語記憶力が改善する被験者が現れています。つまり、軽度認知機能低下(MCI)高齢者を対象とした小規模介入研究では、言語記憶を含む認知機能の一部の指標が改善したとの報告があり、認知症予防への寄与が期待されるものの、ヒトでの大規模検証は今後の課題とされています。
たもぎ茸の効能と効果の研究

たもぎ茸の効能に関する研究は発展途上の段階であるものの、多くの団体がその効能と効果の研究を進めており、有力な研究結果も報告されています。ここでは、たもぎ茸に関する研究結果をもとに、アルツハイマー病との関連性や、注目されている成果をご紹介します。
アルツハイマー病との関連性
先述したとおり、エルゴチオネインを含有するたもぎ茸は、アルツハイマー病との関連性が高いとされる食材です。認知症のリスクを高めるとされる要素のひとつが活性酸素ですが、たもぎ茸には強い抗酸化作用があるため、摂取すると認知症予防に役立つと考えられます。
認知症の原因物質に「βアミロイド」がありますが、かつて行われた動物実験によると、βアミロイドが原因で発生する記憶力・学習能力の低下を抑制すると報告されました。この発見は、脳機能を保護すると同時に、記憶力の改善へとつなげる可能性を強く示唆しています。
さらに言えば、血液中のエルゴチオネイン濃度は年齢を重ねるに連れて低下するとの研究結果も認められています。また、軽度認知症患者における血中のエルゴチオネイン濃度は、健常者と比較して低いとの研究結果もあり、これもたもぎ茸がアルツハイマー型認知症などの改善に役立つとする有力な根拠のひとつです。
最近の研究結果と注目の成果
たもぎ茸に関連する研究は、国内外を問わず多くの機関や企業が行っています。ここでは、最近発表された複数の研究結果や、注目の結果をご紹介しましょう。
加齢に伴う心血管機能障害を軽減する可能性
企業と熊本大学医学部が共同で行った研究で、たもぎ茸を長期的に摂取することにより、加齢に伴う心血管機能障害を軽減する可能性があると言います。
マウスを使った研究により、たもぎ茸を長期摂取すると心臓組織内のたんぱく質濃度が上昇し、大動脈組織における酸化防止効果を果たすことがわかったのです。この研究結果は、年齢に関連して引き起こされる様々な疾患の進行を抑制するための、新たな道を切り開くきっかけになるかもしれません。
胞子放出量を低減したたもぎ茸の開発
地方独立行政法人 北海道立総合研究機構では、たもぎ茸の研究に対して積極的に乗り出しています。たもぎ茸は栽培時に大量の胞子を放出することがわかっており、この問題を解決するために、胞子放出量を低減するたもぎ茸の開発に成功しました。これにより、たもぎ茸が爆発的な普及を見せ、より多くの人々がその恩恵を受けられる可能性が出ています。
出典元:https://www.hro.or.jp/upload/8874/2107-5.pdf
たもぎ茸の摂取方法

たもぎ茸は、先述したように、一部の地域において汁物や炒め物に使う食材として用いられています。しかし、生のたもぎ茸を多量に摂取することは難しいため、効率良く取り入れるためには、適切な摂取方法を選ぶことが重要です。ここでは、サプリメントの正しい飲み方や、普段の食事への取り入れ方、そして摂取に適したタイミングと量について解説します。
粉末やサプリメントの正しい飲み方
たもぎ茸は、さまざまなメーカーが粉末やサプリメントの材料に取り入れて商品化させています。その種類は、たもぎ茸を乾燥させて粉末状にしたものから、たもぎ茸の成分を抽出して配合したサプリメントまでさまざまです。それぞれに適した飲み方をご紹介します。
・粉末の正しい飲み方
粉末の場合は、水や牛乳、スムージーなどに混ぜて飲むのが手軽に摂取しやすい方法です。味噌汁やカレーといった風味の強い料理に加えると、味覚を損なわずに摂取しやすくなるでしょう。なお、ビタミンなどの一部の成分が破壊される可能性があるため、過度な加熱は避けることをおすすめします。
・サプリメントの正しい飲み方
サプリメントの場合、たもぎ茸だけではなく、その他の有効成分も一緒に配合されている可能性が高いです。過剰摂取により健康を損なうおそれがあるため、商品ごとに定められた推奨量を守りましょう。基本的には、水またはぬるま湯と一緒に摂取するのが正しい飲み方です。
食事への取り入れ方
たもぎ茸は、東北以南では知名度が低い食材ですが、そのまま食事に取り入れる方も多いです。たもぎ茸の代表的な食べ方について、いくつかの方法をご紹介します。
・汁物にして食べる
味噌汁やスープ、鍋物に入れて、加熱して食べる方法です。たもぎ茸には特有のうまみがあり、煮込むと出汁がスープ全体に広がります。たもぎ茸に含まれるエルゴチオネインは水溶性のため、汁ごと摂取できる汁物料理は、たもぎ茸を効率的に取り込める食べ方として有効です。
・炒め物にして食べる
肉や野菜などと一緒に炒める方法です。たもぎ茸を早めに投入することにより、たもぎ茸のうまみが全体に広がり、深い味わいを楽しみやすくなります。バター醬油で炒めたり、シンプルにオリーブオイルで炒めたりしても、美味しく食べやすいでしょう。
・その他の食べ方
他のきのこ類や鶏肉などと一緒に炊き込みご飯にしたり、天ぷらやフライにして食べたりする方法もあります。また、たもぎ茸は洋風料理との相性も良好です。たもぎ茸を炒めてパスタと和えたり、グラタンの食材に用いたりすると、料理のグレードが向上するでしょう。
摂取する際のタイミングと量
たもぎ茸は秋に収穫されるきのこです。生の状態で購入した場合は、できるだけ早く消費するように心がけると良いでしょう。サプリメントの場合は、商品ごとの推奨量を守ることが大切です。過剰に摂取すると、腹痛などのトラブルを引き起こすリスクがあります。摂取するタイミングや時間帯が定められている場合は、その指示にも従いましょう。
まとめ:認知症予防におけるたもぎ茸の可能性
たもぎ茸に豊富に含まれるエルゴチオネインは、神経細胞の保護・記憶力の改善・認知症の予防という複数の側面で可能性が示されています。
研究はまだ発展途上ですが、地方独立行政法人 北海道立総合研究機構をはじめ国内外の機関が引き続き取り組んでおり、今後の成果が期待されます。
血管性認知症など他の種類の認知症への影響についても、さらなる研究の蓄積が求められています。

