βグルカン効果とは~期待できる5つの健康メリット

免疫力、がん予防、コレステロール低下——βグルカンという一つの成分に、なぜこれほど多くの期待が寄せられているのでしょうか。βグルカンは、きのこ、海藻、穀物などに含まれる多糖類で、幅広い健康効果が研究されている成分です。

本記事では、βグルカンの基本情報から研究で報告されている健康効果、食品での摂取方法、注意点までを、出典を示しながら整理します。食品ごとの含有量もご紹介しますので、あわせて参考にしてください。

βグルカンとは?その基本と魅力

βグルカンは自然界に広く存在する食物繊維の一種で、免疫や生活習慣病予防との関わりから近年注目を集めています。ここでは成分の基本と、注目される背景を見ていきます。

βグルカンの概要と化学構造

βグルカンは、グルコース(ブドウ糖)が結合した多糖類で、食物繊維の一種です。結合パターンによりβ-1,3-グルカン、β-1,4-グルカン、β-1,6-グルカンなどの種類があり、それぞれ特性が異なります。β-1,3-グルカンはきのこや酵母に多く免疫賦活作用が強いとされる一方、β-1,4-グルカンはオーツ麦や大麦に含まれ、水溶性が高く血糖値やコレステロール管理に関与するとされています。このような構造の多様性が、幅広い健康効果の背景にあると考えられています。

βグルカンの多様な由来(キノコ・海藻・穀物など)

βグルカンは、きのこ、海藻、穀物、酵母など多様な食品に含まれます。特にきのこ類に含有量が多いとされ、シイタケでは100gあたり約3.5gとされています。食品からの摂取に加え、ビール酵母やパン酵母から抽出した成分をサプリメントで補うことも可能です。

意外と知らない!βグルカンの発見と歴史

βグルカンの研究は、1940年代に酵母の細胞壁から発見されたことに始まります。1960年代には、ニコラス・ディルジオ(Nicholas R. DiLuzio)博士がパン酵母から抽出し、注目度が高まりました。

日本国内でも研究が進み、1968年には国立がんセンター研究所(現・国立がん研究センター)の千原呉郎氏の研究チームが、シイタケの黒い部分に含まれるβグルカンの抽出・精製に成功しました。このβグルカンは「レンチナン」と命名され、その後の研究で免疫機能を高める作用が明らかになり、1985年には抗悪性腫瘍剤(注射剤)「レンチナン静注用」として医療用医薬品の承認を受けるに至りました。なお、レンチナン静注用はその後、新薬の登場により需要が相対的に減少し、現在は販売終了となっている点も補足しておきます。

1995年には、FDA(米国食品医薬品局)がオーツ麦由来の水溶性食物繊維(βグルカンを含む)について、心臓病(冠動脈疾患)リスク低減を謳う健康表示を承認しました。この表示には、習慣的摂取量あたり0.75g以上の水溶性食物繊維を含み、かつ低脂肪の基準を満たす必要があるといった要件が設けられています日本でも、きのこや穀物由来のβグルカン研究が進み、サプリメントや機能性食品として普及してきました。

(出典:食品安全委員会, https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu01790380105 )。

βグルカンの驚くべき健康効果

近年の研究により、βグルカンにはさまざまな健康効果が秘められていると考えられるようになりました。ここでは4つの視点から、報告されている効果を見ていきます。

免疫力向上に寄与するβグルカンの働き

感染症対策への関心の高まりとともに、βグルカンが持つ免疫活性化作用が注目されています。摂取によりウイルスや細菌への抵抗力を高め、風邪やインフルエンザの予防に役立つ可能性があります。

英国で50〜70歳の高齢者を対象に行われた臨床研究では、βグルカンを摂取したグループで風邪やインフルエンザの罹患回数が減少し、免疫活性化に関わるIFN-γの量が増加したと報告されています(出典:Fuller R. et al., “Yeast-derived β-1,3/1,6 glucan, upper respiratory tract infection and innate immunity in older adults,” Nutrition, 2017; ホクト株式会社, https://www.hokto-kinoko.co.jp/kinokolabo/kenkyu/223129/ )。また、免疫系の過剰な反応を抑える調整作用も報告されており、アレルギー症状の緩和につながる可能性が指摘されています(出典:e-ヘルスクリニック, https://ehealthclinic.jp/agaricusinfo/efficacy/43911/ )。炎症を促進する働きと抑制する働きの両方を持つ「サイトカイン」のバランスを整えることで、免疫の過剰な反応を防ぎやすくなると考えられています。

がん予防におけるβグルカンの研究成果

がん予防の観点でも研究が進んでいます。シイタケ由来のレンチナンや霊芝のβグルカンは、ナチュラルキラー細胞(全身を巡ってがん細胞を攻撃する細胞)の活性を高め、がん細胞の増殖を抑制する効果が報告されており、日本ではレンチナンが抗がん剤として承認され、胃がんや大腸がんの治療に用いられてきた歴史があります(出典:J-GLOBAL, https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902059240444654 )。

東京理科大学生命医科学研究所の研究チームは、昆布やワカメに含まれる低分子βグルカン「ラミナリン」について、大腸がんに関わるβグルカン受容体「デクチン1」のシグナルを抑制することで、腫瘍を促進する物質(PGE2)の増加を抑え、腫瘍を抑制するタンパク質(IL-22BP)を増やす仕組みを発見したと2023年にNature Communications誌で発表しています(出典:東京理科大学, https://www.tus.ac.jp/today/archive/20230328_1700.html )。ただし、これはマウス実験と一部のヒトデータに基づく研究段階の知見であり、βグルカンはあくまで補助的な役割にとどまります。手術をはじめとする標準治療が必要であり、βグルカン単独での治療効果は限定的である点は理解しておきたいところです。

抗酸化作用とその健康意義

βグルカンは、体内で増えすぎた活性酸素に対抗する抗酸化作用を持ち、細胞の酸化ストレスを軽減すると見られています。酸化ストレスは老化やがん、心血管疾患の一因とされるため、抗酸化作用はこれらの予防に寄与する可能性があります(出典:e-ヘルスクリニック, https://ehealthclinic.jp/column/5212/ )。酸化ストレスはアルツハイマー病やパーキンソン病の発症要因の一つとしても指摘されており(出典:長寿科学振興財団, https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/sanka-sutoresu.html )、健康寿命を延ばすうえでもβグルカンの働きが役立つ可能性があると考えられています。

コレステロール低下に繋がるβグルカンの効能

βグルカンにはコレステロール値を下げる効果が報告されており、心臓病予防への寄与が期待されています。オーツ麦や大麦由来のβ-1,4-グルカンは、腸内で胆汁酸と結合し、コレステロールの吸収を抑制するとされています(出典:塚越製菓, https://tsukagoshisan.com/shop/information/oats-nutrition-beta-glucan )。British Journal of Nutrition誌(2020年5月公開)で報告された研究によれば、1日3g以上のβグルカンを3週間以上摂取するとLDLコレステロールが大幅に減少したとされています(出典:フレスタ, https://www.fresta.co.jp/healthyproject/23474 )。オートミールや大麦ご飯を日常的に取り入れることで、心臓病のリスク低減につながる可能性があります。

βグルカンを多く含む食品一覧

βグルカンはさまざまな食品に含まれ、日常の食事で手軽に摂取できます。継続的な摂取が難しい場合は、サプリメントの活用も一つの方法です。

キノコ類の含有量

ホクト株式会社が公表しているデータによると、生のきのこ100gあたりのβグルカン含有量は次のとおりです。

キノコの種類 βグルカン含有量(100gあたり)
生どんこ 3.5g
マイタケ 2.3g
ブナピー 2.0g
エリンギ 1.9g
ブナシメジ 1.8g
霜降りヒラタケ 1.5g

(出典:ホクト株式会社, https://www.hokto-kinoko.co.jp/kinokolabo/jiten/jiten06/ )

なお、霊芝(レイシ)についても含有量が多いという情報が一部サイトで見られますが、上記の一次情報源では数値を確認できなかったため、正確な数値は公表元への確認をおすすめします。

βグルカンは加熱による損失が少なく、水に溶け出す性質を持つため、溶け出した成分も摂取できるスープの具材としての活用もおすすめです。

海藻・穀物に含まれるβグルカン

海藻については明確な含有量のエビデンスは確認できませんでしたが、ワカメや昆布、モズクにはβグルカンが豊富に含まれると考えられており、サラダや味噌汁からも摂取しやすいでしょう。オーツ麦や大麦にもβグルカンが含まれ、オーツ麦の含有量は100gあたり3〜5g程度とされています(出典:塚越製菓, https://tsukagoshisan.com/shop/information/oat-milk-and-oats )。朝食にオートミールを取り入れることで、気軽に摂取できるでしょう。

水溶性食物繊維の含有量ランキング(参考)

βグルカンの含有量に関する研究は、キノコ類以外については十分に進んでいないのが実情です。そのため、ここではβグルカン以外の成分も含む「水溶性食物繊維」全体の含有量ランキングを参考情報としてご紹介します(数値は文部科学省の日本食品標準成分表をもとにした一般的な値ですが、今回このランキングと完全に一致する一次情報を確認できなかったため、正確な数値が必要な場合は文部科学省食品成分データベース https://fooddb.mext.go.jp/ で個別に照合してください)。

順位 食品 含有量(100gあたり)
1 大麦(押麦) 4.3g
2 オートミール 3.2g
3 干しシイタケ 3.0g
4 ごぼう 2.3g
5 全粒粉小麦(強力粉) 1.5g
6 オクラ 1.4g
7 にんじん 1.3g
8 さつまいも 0.9g
8 プルーン 0.9g
8 西洋かぼちゃ 0.9g

干しシイタケやごぼう、にんじんを使った煮物などを取り入れると、効率よく摂取できるでしょう。

βグルカンの副作用と注意点

βグルカンは天然由来の食品にも含まれ、一般的には安全性の高い成分と考えられています。ただし、アレルギー反応や過剰摂取による軽微な副作用のリスクには注意が必要です。

βグルカン摂取におけるアレルギーのリスク

βグルカンは真菌由来のため、きのこや酵母にアレルギーがある人は、皮膚発疹、かゆみ、呼吸器症状などの反応を起こす可能性があります(出典:同仁化学研究所, https://www.dojindo.co.jp/letterj/114/review/01.html )。特にカビ由来のものについては、炎症を悪化させるとの研究報告もあり、注意が必要とされています(出典:KAKEN, https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-23710046/23710046seika.pdf )。

副作用を避けるための推奨摂取量

βグルカンは食物繊維の一種で消化に時間がかかるため、体質によっては腹部膨満感や下痢といった消化器系の不調を引き起こす可能性があります。特にサプリメントを過剰摂取すると、腸内での発酵が活性化しガスが溜まりやすくなる点にも注意してください(出典:楽天, https://www.rakuten.ne.jp/gold/pycno/special/about_glucan.html )。

推奨摂取量は目的により異なりますが、ヨーロッパの研究では1日あたり3g以上、オーストラリアでは1食1g以上の摂取が推奨されており、これらを踏まえると1日3g程度を目安にするとよいでしょう(出典:GronG, https://grong.jp/dflife/beta-glucan-about-working/ )。

採血検査で見るβグルカンの影響

カンジダ属やアスペルギルス属などの真菌感染が疑われる場合、血液中のβ-D-グルカン値が測定されることがあります。βグルカンは多くの真菌の細胞壁に含まれる成分であり、深在性真菌症の補助診断として利用されています(出典:神戸きしだクリニック, https://kobe-kishida-clinic.com/medical-device/fungal-examination/ )。ただし、β-D-グルカンを産生しない真菌も存在するため陰性が感染否定を意味するわけではなく、また特にICU(集中治療室)の患者では偽陽性を示す可能性がある点にも留意してください(出典:亀田総合病院, https://www.kameda.com/pr/infectious_disease/post_334.html )。βグルカン配合のサプリメントを利用している場合、この検査を控えている際は担当医に相談し、摂取を続けてよいか確認するとよいでしょう。

まとめ

βグルカンは、きのこ、海藻、穀物に含まれる多糖類で、免疫力向上、がん予防研究、抗酸化作用、コレステロール低下など、多岐にわたる健康面での関与が報告されている成分です。

シイタケや霊芝、オーツ麦などを食事に取り入れ、必要に応じてサプリメントで補うことで、効率的な摂取につながるでしょう。重篤な副作用のリスクは低いとされますが、過剰摂取によるトラブルや、真菌アレルギーがある場合の注意点は理解しておいてください。

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